技術と表現と

『技術と表現』をメインテーマに据えながら、自分の興味あることを日々綴っていきます

経営者・本田圭佑の面白さ 〜KEISUKE HONDA CAFE SURVIVE〜

純粋に面白かったので紹介を。

この動画の存在を知ったのは、最初はクラシルの堀江さんが対談してるというのがfacebookのタイムラインで流れてきたことでした。 (でも、それをぱっと見たときは、「へー」としか思わなかったので素通りしてました...)

しかし、その次の日。今度は別の記事がfacebookで流れてきました。

本田圭佑の“らしい”教育論とJへの見解 村井チェアマンと日本の未来を語る

僕は小学校の頃から一応高校まで野球をやっていたこともあり、プロ野球Jリーグの盛り上がりというのを常に比較して見てきたのですが、サッカー日本代表の盛り上がりを含め、日本でのサッカーの盛り上がり(及び野球の盛り下がり)のことがずっと気になっていました。

その中で、現役サッカー選手の中で最も興味のある本田圭佑と、Jリーグの仕掛け役であろうチェアマンの村井満の対談。

これは一度見ておきたい、と思い早速見てみたのですが、これが面白い。

内容としては普通に面白いくらいですが、本田圭佑」という人、「村井満」という人が面白いのです。

それを今日は少し紹介しようと思います。

思考する本田圭佑

インタビューも多く、本田圭佑を知る機会は世の中に溢れていますが、経営者としてや投資家のような目線で話す本田圭佑を見る機会というのはそう多くないです。

まして、単なるインタビューではなく、対等や格上の相手とその手の対談をするというのは、ほぼないのではないでしょうか。

そういう意味で、村井さんと話をする本田圭佑を見るというだけでまず1つの価値があります。

何を思考し、実践しているか、というのを本田圭佑自身のフィルターを通した言葉で聞く。 これがまず第一の面白さです。

ただ、内容としては非常に身体的で、アナログ的で、古典的な話です。 技術畑の人間からすると、あまり新鮮味がある話ではないですが、「明日役に立つことをする」ビジネスの世界では非常に重要な観点であり、サッカーの試合という「現場」で第一線に立ってプレーをし、さらにビジネスの場でも常に「お金」という現物と対峙している人間が話せばこうなることはごくごく当たり前のことです。

Jリーグの仕掛け人・村井さんの重要さ

この対談で、やはり肝となるのは村井満という男の存在です。 冒頭にも書きましたが、Jリーグは盛り上がっていると思います。 日本のスポーツ業界でいえば、JリーグBリーグが伸び率としては二大巨頭になるのではないでしょうか。 (野球は正直衰退しているばかりと思います)

そんなJリーグの立役者である村井さんの視点は興味深いです。 本人が自分のことを「人と接し続ける仕事をしてきた」と語っているように、「人」に対する好奇心とそこからの洞察は興味深いものになっています。

Jリーグのチャンピオンシップの話をとってみても、「選手の成長」「業界全体の盛り上がり」をどうやってシステム的に両立する仕組みを作るか、というところにきちんとフォーカスし、「人が育たなければ持続的成長はない」ということを念頭に置きながら活動しているように見受けられます。

足元を見て、土台を固めながら成長戦略をきちんと描くという点で、村井満本田圭佑は強い共通項があるように感じられました。

教育論

対談の中で、「どうしたら世界で戦える選手を育てられるか」というような話の中から教育論の話に展開していきます。

まぁ、取り立てて目新しいものはないといえばないのですが、

  • 指導者を教育する機関・仕組みを作っている
  • Jリーグのユースは生涯メンターのような役割になり得る(一方、野球は高校生時に高校野球しか場がなく、中学から引き続きで面倒を見てくれる存在・環境がない)

という点が気になりました。

特に、「指導者を教育する」という観点をきちんと持ってJリーグの改革に当たっているのはすごくいいなぁ、と感じるところで、プロ野球もいい加減そういう点からの面白さも出してきてほしいと少し思ったりするところです。

最後に

サッカー業界の話を聞くと、毎回思うのは「どうして野球業界はダメになる一方なんだ」ということです。

まぁ、背景はいくらでもあると思います。

改善策もいくらでもあると思います。

ただ、一番重要なのは「衰退するべくして衰退した」ということでしょう。

幻冬社の見城さんや箕輪さんとキングコングの西野さんの話を聞いていた時に、

「出版社は時代の波で儲かった。バブルみたいなもん。その時のやり方、そのままでやってれば、時代に食われるのは当然。今儲からなくなってるのは当たり前。努力を怠ったのだから当たり前」

という話が出てきましたが、プロ野球もまんまこの話が当てはまるでしょう。

だから、第一線に立って改革しようときちんと動く人が出てきて、表から裏までやっていけば、改革の余地はまだまだあると思います。

そんなことを思わされたり、考えるきっかけになるくらいには、この二人の対談が刺激的でありました。

【Computer Graphics】BRDFの始め方

最近BRDFについて勉強を進めてきているのですが、より一層Computer Graphics(以下CG)界の人にご指導・ご鞭撻いただきたいと思っているので、自分の知識を整理してちゃんとアーカイブして分野に少しでも貢献していこうと勝手に思っています。

Computer Graphicsをどうやって勉強していったか

まずそもそもBRDFを勉強する以前にCG自体を勉強しないと話にならなかったです。

ただ、CGをまずやろう、となった時に大概OpenGLから話が始まったりします。 床井先生の資料はよく出てきますし、わかりやすいです。

GLFW による OpenGL 入門

でも、僕がまず知りたいのはCGの概論・理論的なところの土台をしっかりとしたいわけです。 Viewとかの話をいきなり実装ベースで語られる前に、全体的な概要を掴みたいわけです。

そこでまず使ったのがこちら。

筑波大学のCG関係の授業でもよく出てくる本です。 CGに全く触れたことがなくて、初心者の状態からでも入りやすい本になっています。 一から全て書いてくれてるので、まず一冊読むとCGの世界観がわかってきます(そこそこ新しい手法も載っています)。

そして、ここからもう少し詳細な話を聞きたいとなると、こちらのリンク先にある資料が役に立ちます。

MIT Open Lecture

MIT Open Lectureの資料がズラーっと並んでいます。 もちろん最初の本と被っている部分も多いですが、一歩深い話にまで踏み込んでいます。 これを読むことで、より理解が進むのは間違いありません。

この2つが分野全体を網羅しながら勉強できる参考資料となっていて、そこに補足する形でいくつかのサイトや資料を紹介します。

『THE COMPREHENSIVE PBR GUIDE Volume 1: The Theory of PBR by Allegorithmic』私家訳版

『THE COMPREHENSIVE PBR GUIDE – Vol. 2: Practical guidelines for creating PBR textures 』私家訳版

2017年度 東京大学理学部 コンピュータグラフィクス論

どこかの海外の大学の講義資料

最新の手法やTipsの話をせずともこれだけの資料が出て来るわけです。 Computer Graphicsの分野がいかに広範なものか理解できると思います。 ちなみに今回は入門に近い分野のみを扱うので、最新の話はしません。

BRDFとは何か

さて、前章であげた資料を読んでいただいた暁には、Computer Graphicsについて基礎的な理解が進んだことでしょう。 次に、BRDFとは何か、という話をしていきたいのですが、これは色んなリンク先を読んでいくことで徐々にわかっていくことだと思います。 一応、僕の方でも書きますが、併記するリンク先を色々と読んでいくことが重要です。

BRDF = Bidirectional Reflectance Distribution Function

日本語でいうと双方向反射率分布関数

この日本語に全てが詰まっています 「双方向」であり「反射率」「分布関数」なのです。

「双方向」であるというのは?

光を物体に当てると反射・屈折・透過をします。 そのうち特に反射がここでは重要で、入射光があれば反射光があります。 この2つを入れ替えても同じになる、というのが「双方向」の意味です。

「反射率」の「分布関数」とは?

入射光を反射する時、

  • 鏡面反射
  • 拡散反射

が主な要素ですが、特にこれらの反射がどのような向きに向かってどれくらいの強さで、何色を反射するかというのを分布関数として表現するということです。

向きをあらゆる方向で取らなければいけないのは、ザラザラな表面であればあらゆる角度に光が拡散するのは想像のつきやすい話で、拡散反射の話です。 そして、強さというのは、物体表面でどれくらい光が吸収されるかという話とつながります。 更に、というのは、黒の物体や赤の物体のように、物体は波長ごとに吸収率が違うことからもわかるように、反射する色(波長)も物体によって変わります。 なので、反射率を波長ごとに求めるような(モデル化するような)場合もあるのです。

これらBRDFを理解するのに役立つリンク集

僕はイラストを描くのは苦手なので、図解入りの説明はリンク先に任せます。

BRDF レンダリングの方程式

BRDF,Irradiance,Radianceの定義

基礎からはじめる物理ベースレンダリング

脱・完全鏡面反射~GGXについて調べてみた~

BRDFで外せない論文たち

おそらくReflectance Mapに関する最初の論文がこれです。 Calculating the reflectance map (1979)

A Data-Driven Reflectance Model (2003)

それと、Phongモデルの理解は必須です。 これは論文を読むまで行かなくても、wikipedia等でめちゃくちゃ基礎となる方程式の理解くらいはしておく必要があります。 Phongの反射モデル

An Overview of BRDF Models (2012) これはBRDFのモデルに関して、2012年時点であらゆることをまとめてくれています。

モデルはこのOverviewにたくさん載っていて、更にそれぞれのモデルがどれくらいの近似をできるかというのを調べた論文もあったりします。 Fitting analytical BRDF models to low-resolution measurements of light scattered from relief printing samples (2016)

MERL BRDFについて

さて、BRDFの理論がどんなものかわかってきたところで、実際に値をどうやって使うことができるかを考えていきます。

そもそもBRDFのモデルというのは、現実世界の値への近似です。 Fitting Analytical...の論文なんかは、モデル化したものと実際の測定値の値の差分(Err)を最適化(最小化)する論文なわけですが、それをするためにはBRDFの実際の測定値が必須です。

で、その測定って自分でやるのか、という話ですが、機材を買ったりどこかに外注すれば測れるかもしれませんが、普通、それ用の機械とか持っていません。 そこで、過去に計測してくれたデータベースのデータを利用するのが吉です。 MERL BRDF Database

100種類のMaterialに関して、それぞれのBRDF値が記録されているデータベースとなっています。

http://people.csail.mit.edu/wojciech/BRDFDatabase/code/BRDFRead.cpp というファイルがあり、これをコンパイルして実行することで、binaryデータとして保存されている反射率の値の読み込みができるようになります。

ちなみに、

というコードがあるように、入射光と視点方向のベクトルをそれぞれ用意し、値を少しずつ変化させて行くことで反射の分布の値をそれぞれ取ることができます。 そして、red, green, blueの値がそれぞれあるように、モデルにもよりますが、RGBそれぞれの反射率を分けたり、波長ごとに反射率を分けたり、場合によってはRGBに全て同じ反射率を適応することがあります。

元のコードのままでは読み込み&コンソールへの出力まではできますが、textファイルなどへの保存はできないので、そこら辺は自分でやる必要があります。

BRDFLab

MERL BRDF DatabaseはBRDFに関する論文で引用されることはめちゃくちゃ多く、ここのbinaryデータを利用している論文は数多いのですが、その中でも簡単に試せるソフトウェアを提供してくれている人がいます。

そのソフトウェアがBRDFLabです。

BRDFLab

GPUが搭載されているWindows PCに限定されてしまうのが制約条件ですが、シンプルに使いやすいです。 File > New > Measured から、MERL BRDF Databaseのbinaryファイルを選択して読み込ませることもでき、反射率分布の様子を見ることができます。 ただし、Environment Mapを利用したレンダリングには適用できないようなので、Environment Mapを適用した時のレンダリングを見たい場合は、既に用意されているXMLから読み込んで見る必要があります。

もしくは、pbrt-v3を利用する手もあります(これは別の機会に紹介します)。

最後に

簡単にComuter Graphicsの始め方からBRDFの入門のところまで触れてきました。

ただこれは、あくまでも入門編に過ぎません。

次回以降、もうちょっと詳しく、最新論文のことにも触れながら進めていきたいと思います。

落合陽一の中にアーティストはいるのか

落合陽一 / Yoichi Ochiaiは, 「落合陽一 (+ -)」であるし, Yoichi Ochiaiであるし, 'Ochi + AI'である.

2015年の春, 彼の脳内にのみ在る'現実'が言語化され始め, 今在る現実の根幹を揺さぶりだした.

"全てがComputationalizedされた融合世界で"

'Digital Nature'はもはや顕在化した未来である.

世俗という時代性を持つ存在と接する中で, 彼は肩書きから乖離していった.

それでもその昔, 彼は'Artist'という看板を携えていたと伝え聞く.

残念なことに僕を含む多くの人間は, 彼が時代や世俗との接点を増やし始めてからようやく彼を視認することができるようになった. だから'Artist'としての彼を知らない.

今彼が提示してくれる'Art'だけが唯一その片鱗を僕らに見せてくれる. しかし, そこにはもう「表現」というものが存在していないのだ.

多くの者は問う. 「落合陽一は何者なのか」 と.

彼は答える. 「落合陽一は落合陽一なのだ」 と.

今日は, 多くの人間を魅了し困惑させる落合陽一という存在を, 久しぶりに'Artist'というフィルターを通して観察してみる.

彼がこれからどうしていくか, どうなるのかはわからない.

それでも, 今導き出せる仮説を以って未来を照らしてみたいと思う.

違和感

僕はその日, 3人のおじさんたちと酒を飲んでいた.

1人は, 高校や短大でピアノを教えている教師である. 彼は学芸大を経て, 母校である高校に戻ってきたそうだ. しかし, 学芸大に行ってなければ乞食になっていたかもしれないという. 彼は云う, 「運が良かったのだ」と.

1人は, これも高校で絵画を教えている教師である. 彼は東京藝大の彫刻科を出て, 紆余曲折を経て高校教師を今やっているそうだ. 謙虚すぎる性格を先輩教師に指摘されていた. 彼は云う, 「謙虚すぎるとよく言われます」と.

1人は, 高校でギターを教える変わり者の教師である. 彼は高校卒業後, バイト先での偶然の出会いから音楽の世界に誘われたそうだ. しかし, 生徒の前に立つ時, 昔の話はせず, 肩書きのない1人の人間として対峙していたいらしい. 彼は云う, 「生きるために音楽で食っていくしかなかった」と.

そう. つまり僕はその日, 母校の教師3人と酒を飲んでいたのだ.


「落合さんってどうなの?」 僕が落合研に所属しているという話になった折、彫刻をやってきた先生が僕に質問をしてきた.

「どう, というのはどういうことですか?」 「えっと, つまり... アーティストとしてどういうことを考えているのかなと思って. 作品とかも少ししか知らないんだ. シャボン液に蝶を写すやつだったりとか, 銀の球体が回るやつだったりとか」

「そうですね... 僕の解釈で話しますけど, これは『魔法の世紀』にも書かれている話ですが, 基本的に落合さんは既存の現代アートが活用する『文脈ゲーム』をやめて『原理ゲーム』でやろうという話をしています. 絵画でもなんでもいいですが, 人間の感覚的に感動するアートというものは存在しますよね. その感動こそがやっぱり本来はアートをアート足らしめるものであり, 文脈を一義的に考えることへのカウンターを行っているわけです」

「なるほどね. そうだよね, うん. でも僕が気になるのは, その先に落合さんの個人としての, アーティストとしての表現があるのかっていうところなんだ」


「アートはアーティストから見た世界そのものだ」

という話をメディアアーティストの藤幡正樹さんは話していた. その場には落合さんもいたし, 僕には落合さんがその意見に肯定的なように見えた.

ただ, この言葉では一見すると『時代性』を重んじているもののように見えてしまうかもしれない. しかし, そうではないということを共有しておかねばならない.

「アーティストが見た世界を, 自分という個性, 自分というフィルターを通して歪ませて, それを表現したアウトプット」 というのがもう少し詳しい説明になるかもしれない. つまり, 『時代性』と『偏愛』の共存, そしてそれらが洗練されていることが重要なのである.

『時代性』というのは常に付き纏う話だ. 今の時代のアートを『コンテンポラリーアート』と呼ぶ風潮もあるが, 中世ヨーロッパのアートも, その当時の人々にとっては『コンテンポラリーアート』であった. それゆえに, 全てのアートは『時代性』から完全に脱却することは叶わない.

では, 何がその上で重要になるか, といえば, 時代を超えて人々の心に訴えかける「何か」がそこに宿っているかどうかという点に他ならない.

そしてそれは往々にして, 「アーティスト」という存在そのものである.

ピカソの絵を見たら, その書いてる感じが自分の身体に憑依するんだよ. ミラーニューロンみたいにさ」

藤幡さんの言葉がここでも蘇ってきたものだった.


さて, ここで議題に上がっている話は, 落合さんがアーティストとしての表現を含めているかどうかという話なのである.

「『原理ゲーム』に落とし込んでアートをやろう」 というのは確かに一つの意見表明とも言える. しかし, それは一方で『時代性』に対する単なるカウンターでしかない, と言える側面も持ち合わせているのだ.

しかし, それでも問題はない. あらゆるアートは『時代性』を内包してしまうものなのだ. では何が問題か. 先に藤幡さんの話を参照した時に, 2点が重要であると話した. 『時代性』, そして『偏愛』だ.

「落合陽一のアート作品の中に, 『偏愛』は存在するのか」 と彫刻の高校教師は疑問を持っていたのだ. そして, それはつまり, 『偏愛』がなければアーティスト足り得ないのではないか, とも.

過去

「落合さんの学生の頃の作品って, 今よりもっとアートっぽいよね」 と言っていたのは, 落合研に来ている武蔵美の4年生だった.

確かに, 過去のアート作品を見てみると, その『偏愛』が垣間見える気がする. 落合陽一[wikipedia] 落合陽一の作品 (2010年)

おそらくThe Colloidal Displayが実は最も技術と表現のバランスが取れていた作品だったのではないだろうか. そして, これ以降の主だった作品からは『偏愛』が抜け落ちていき, 『原理ゲーム』を利用した『文脈ゲーム』へのカウンター部分のみが表出した作品になっていっているような気がする.

しかしながら, 重要な事実は, 過去(特に学生時代)において, 落合陽一は『表現(偏愛)』のところまで作品に込めていた, という点である.

それが過去にはできたのに, 今はもうやっていないのだ.

今, そしてこれから

「アーティストとして長い目で見たら, 『時代性』に特化してしまうのは結局マイナスなんじゃないだろうか」

彫刻の先生はどうしても違和感をぬぐいきれないようだ.

「でも, 彼もそんなに馬鹿じゃない. それをわかった上で, 今はそうしているんだろう」 そう補足したのは, 僕にとっての恩師でもあるギターの先生だった.

確かにそうなのだ.

過去の作品を見れば, 『偏愛』を込めてアーティスト足るように動くこともできるはずなのだ. しかし, そうはしていない.

なぜそうしないのだろうか.

それはわからない. ただ, 近くにいて何となく感じるのは, そこに戦略的なものがあるわけではないということ. そして, ビジョンを立てた時から, そっちの方が優先度高くなったんじゃないか, ということだ.

アーティストには色々なタイプがいると思う.

鴨長明」を藤幡さんはアーティストの例として頻繁に出していたが, 鴨長明のように私的な感情を表現として乗せることが得意なアーティストもいれば, 作品等を通して社会を挑発し変容させていくことが得意なアーティストもいるだろう.

落合さんの知識部分のバックグラウンドの広さは多くの人が知るところであるが, それは知的好奇心もまた幅が広いということを意味する. その手の人物であれば, 私的な『偏愛』を表現として顕在化させることだけに活動を抑えきれないのは自明の理ではなかろうか.

'Digital Nature' それは一人の男の中で導かれた新たな自然の摂理である.

その世界観を今, 彼は熱心に社会に実装している最中なのだ.

この活動の影響は, 1アーティストが作品を通して及ぼす影響の範囲とどちらが大きいだろうか.

落合さんはおそらく, 今の活動の方が作品制作より断然影響のあるものだと思っているから, 作品制作への注力度合いを下げているはずである.

だから, こうして世俗の中で, 社会の中で生きているのだ.

......

しかしながら, 将来の話はわからない. CREST 先日選考に通ったCRESTは5年半の研究期間が指定されている. ゆえに, あと数年は少なくとも研究をメインにやっていくことは目に見えている.

だが, そのあとのことは誰も知らない. 本人もきっと知らないことだ.

だから, もしかしたら何年か経った時, 彼は再びアートの世界に全力を注ぐようになるかもしれない.

少なくとも年齢がもっと進んだ時, 落合陽一はきっとアーティストになる. 僕はそう思っている. アートというものだけが, 彼の年齢の積み重ねを肯定してくれる唯一の拠り所になる気がするから.

そんなことを言ってみても, 誰も将来のことはわからない.

彼はただ生きていく. その瞬間, その瞬間を.

あとがき

今回の話は, ほんのさわりに過ぎない. ちょっとした夏の宿題に, 少しだけ手をつけてみたようなものだ.

本当はもっと書きたいことが, 書くべきことが山のようにある. でも, それを書き, 語るのはもう少し後にしたい.

尾原和啓『モチベーション革命』を読んでみて

facebookで回ってきた本がちょっと気になったので読んでみました。 その本というのは、尾原和啓さんの『モチベーション革命』です。

尾原和啓さんのことは名前だけたまに見かけるだけで、正直なにをやっている人なのか知りませんでした。

そして、本を読み終えた現在も「IT分野とかよくわかってる良さげなおっちゃん」という認識しか持てていません...(すみません)

この本を読んでみようと思ったのは、帯に書かれてた落合さんのコメントを見たときでした。

尾原和啓は稀代のサーファーである。 時代の波を使って技を魅せる。 この人、俺より17歳も年上なのに、なんでこんなこと書けるんだろう。 ―落合陽一

要するに、「このおっちゃん、歳の割によくわかってんじゃん」って言ってるようなもんですよね、これ笑

facebookで流れてきた「この本は面白い」っていう真面目なコメントたちと、落合さんのちょっと肩透かしのようなコメントのギャップが気になって、kindle版で購入してみたのです。

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Computer Graphicsから見る 建築/空間/インテリア 論

『建築/空間/インテリア 論』といっても、僕はその分野を大学などで専攻しているわけではありません。

唯一やっていたとすれば、建築の照明デザイン事務所でバイトをしていたくらいです。

今は研究で『空間』を扱う流れでComputer Graphicsをメインに進めています。

「お前なんかが語る資格あるのか」

と、どこかしこで言われそうですが、ちょっとしたきっかけで考える機会を得たので、自分の考えをアウトプットしておこうと思います。

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国立新美術館『安藤忠雄展』で感じた安藤忠雄の信奉心

現在、国立新美術館で開催中の安藤忠雄展 〜挑戦〜』に行ってきました。

恥ずかしながら展示に行くにもかかわらず、僕は安藤忠雄に関する事前知識がほぼありませんでした。 「コンクリートを使ったモダニズム建築の流れの人だろう」くらいにしか思っていませんでした。

しかし実際に行ってみると、

「しんど...」

と思わず呟いてしまうような内容だったのです。 一言で言えば、タイトルにあるように圧倒的な「信奉心」の人だったのです。

それが一体どういうことか。このことについて今日は話ししていきます。

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移転しました

記事は残していますが、Wordpressを使ったブログへ全て移植しました。

よろしくお願いします。

自分にとっての表現手段 〜Ars Electronica 2017と研究〜

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自分にとっての表現手段 〜Ars Electronica 2017と研究〜


久しぶりの投稿になります(気づけば1ヶ月ぶり...)

9月上旬は Ars Electronica Festival 2017
中旬は CHI 2017 submission deadline
と忙しいシーズンが続き、結局CHIはsubmitができず、反省の熱が冷めない今日この頃です。

そんな中、久しぶりに刺激的なものを見ました。

山田孝之のカンヌ映画祭

entertainmentstation.jp

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後輩バンドへの手紙 01

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後輩バンドへの手紙 01


エージェント会社的役割を作る話を聞いて感じたこ

「売り出しは俺たちが担う。だからミュージシャンは音楽を作ることに専念してけばいい。役割を分担しよう(=エージェント会社化)」

音楽を作る作業とマネージメント/戦略の分離
たぶんよくある話だと思う

うまくいくケースはあると思うが、不幸な人を増やしかねない危うさも兼ね備えていると思う
武井壮がぶち当たってる問題はまさにそれである

www.youtube.com

武井壮『挫折』『価値とは何か』って話は、スポーツ・音楽・アート・デザイン系に通ずるところが大きいと思う
スポーツ業界では、ジュニア育成に力が入ると同時に、食い方を知らない中途半端なアスリートを多く生み出してしまっているらしい
食っていけない選手が増えていることを武井壮は課題に感じているわけだが、この課題はおそらく件のマネージャーのやろうとしてるエージェント方式によっても生み出されるものな気がするのだ
(それにスポーツ業界自体、契約を結ぶ代理人だってプレイヤーの人生全体をサポートすることはない。結局自分で生きていく方法は自分で考えなくてはいけない)

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コミュニティ論概論

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コミュニティ論概論


最近の個人的な一番のブームはコミュニティ論です。
これ、むちゃくちゃ面白いです。

きっかけは、と言えばVALUです。
個人で、By Nameで生きていけるように、という話を延長させていったところ、個人のオンラインサロンという話に行き着きました。
そして、オンラインサロンというのはコミュニティをどう醸成していくかという話に他ならなかったのです。

まだ僕個人が作ったコミュニティは、日も浅く小さいものなので、体験から話せる部分は限られます。

yamamoto-info.hatenablog.com

なので、youtubeなどで語られていて面白いものを片っ端から見てきた僕がオススメのものを全て記載していこうと思います。

ちなみに、キーになる人物は4人です。

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