技術と表現と

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VR映画?VRドラマ?VR劇? 思うところを述べる①'

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VR映画?VRドラマ?VR劇? 思うところを述べる①'


yamamoto-info.hatenablog.com

前回の記事で、『HELP』という360度ドラマを取り上げました。
この作品に関して言えば、やっぱりCGが凄いところなのですが、自分としてはそこまで好きになりきれない作品です。
そのことについて、少し思ったことを書いておこうと思います。

映像表現特有のうまみが薄い

映画にしてもドラマにしても、こういった映像での強みって一体なんでしょうか?
僕としては、一番重要なのは『顔のアップ』とか『表情』といった、『人間の顔に関する映像』だと思うんですよ。

例えば、アーティストのライブ映像。
これって、現場に行ってもこんなに近くの様子は見れないわけですよね。
というか、あまつさえライブ会場に液晶画面があって、そこに映されてしまうわけですよ。

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こんな感じ。
顔の表情だとかが視聴者に求められているのがはっきりわかるものです。
しかし、なぜこういった映像が必要とされたりするのか。
ここで思うのが、CG界隈でよく話題になる不気味の谷現象』なんです。

人間は人の顔を本当によく見ている

不気味の谷現象』は、リアルなCGを制作する現場ではよく言われているであろう言葉で、
リアルなアンドロイドとかを見るときによく感じたりしますね。

これは、人間というものは、人間の顔をとても細かい部分までよく見てしまう(観察してしまう)ため、ということなわけですが、
まぁ、それは当たり前といえば当たり前ですよね。
鏡を見れば自分の顔を見ますし、普通に生活していても他者の顔を数多く見るわけですから。

そういった、脳内のデータベースにある顔との一致不一致が『不気味の谷』に影響していると思うわけです。

(そして逆に、動植物に対してであれば、この不気味さを感じることはあまりありません。
このことをよく感じられるのは、映画『ジャングル・ブック』だと思います。

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動植物は全てCGですが、不気味さという感覚はあまり感じませんよね。
その中に、本物の人間の子供が入り込むことによって、この奇妙な超リアル感が創出されているわけです。)

というのは余談でして

それぐらい、人は人間の顔をよく観察し、小さな違和感も発見してしまう。
逆に、人間の顔というのは多くの人にとって、それだけ関心のあるものだということなわけです。

だから、僕はライブとかでも、表情とかまで見れる『映像』の方が好きになったりするんです。

これくらい強いコンテンツであり、人に印象を与えるのに重要な役割を担う『顔・表情』がこの『HELP』という作品には全然出てこないんですね。

ずっと3人称視点の、少し遠目からの映像を見てばかり。
これでは、面白みに欠けるというか、臨場感に欠けてしまいます。

映画で顔のアップがないものなどほぼないように、いくら360度になったからといって、顔をみせることを怠ってはいけないと思うわけです。

そして、これが『映像』と『演劇』の大きな境目であるとも思うのです。

360度ドラマの視聴は、演劇鑑賞的である

というのも、360度映像では自分で見たいところを選択することができます。
つまり、一般的な舞台鑑賞と同じで、
360度映像の中で、目の前で演技している人の全体を見ているかもしれないし、
その人の顔だけ、手足だけを見ているかもしれない
わけです。
この視聴方法は、まさに演劇鑑賞と同じなわけです。

ただ、一方で映像であるということを忘れてはいけません。
映像内のある一点に注視するのと、現実世界内のある一点に注視するのとでは、体験がまるで違うからです。

例えば、とある天気のいい日。東京から富士山が少し見えたとします。
その時見た富士山というのは、自分のイメージの中では(心象の中では)割と大きく描かれるのではないでしょうか?
しかし、いざ写真に撮ってみると全然大きくない。むしろほとんど映っていない。

こういったことは日常茶飯事でしょう。

twitterであれこれ見ている時に、こんなつぶやきを見ましたが、まさにそういうことです。

だからこそ、映像としてのVR映画などでは、お客さんの視聴態度が現実の舞台パフォーマンスに近づいたとしても、
従来の映像演出としての、顔のアップになってしまうような演出が欠かせない、
と思うわけです。

1人称視点の好きなCM

そして、こういったVR映画やドラマなどで頭を動かす時、
僕は昔見て心にずっと残っているこのCMのことをいつも思い出します。
これくらいのクオリティになるのか。

それが僕の中にある一つの(身の丈以上の)基準です笑

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