VR映画?VRドラマ?VR劇? 思うところを述べる③
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VR映画?VRドラマ?VR劇? 思うところを述べる③
このシリーズも一旦最後にしようと思います。
ネタが尽きてきた。。
最後の動画はこちら。
『予告犯360° - 真実を見抜けるか?|find the truth 360 degree trick movie .』
日本で作られた360度ドラマです(といっても、CM用の短いものですが)。
前回のエントリで、『Pearl』が一番好きかも、と言ってはいるんですが、
ただ、自分が作ろうとした時に一番参考になったのは、『予告犯360°...』です。
これが一番、VR×演劇という枠に一番近いからです。
※ネタバレありなので、気になる人は動画を視聴してから進めてください。
現実世界でCGを加えず撮影している
まず大事なこととして、現実の空間を、ドラマ撮影のように貸し切って撮影しています。(ちなみに場所は中野らしい)
こうした空間を使って撮影されたものは、やはり生々しいです。
映画やドラマでは捨象されてしまう部分が全て描かれているわけです。
人が歩く地面、人気のない・イベントの起こらない建物・店、
こうしたものも全て映して(映って)しまうわけなんです。
一人称視点の360度映像を利用
そして、この動画では、今までの『HELP』『Pearl』とも違う、一人称視点の映像利用が行われています。
この一人称視点、というのは誰か役者の視点での映像という意味です。
これでニュアンスが伝わるでしょうか?
この手法によって、「自分が何者かわからない」という状態を必然的に引き起こせるわけです。
最後のオチは、読めるものではありますが、一つの演出効果としては期待できるものになっています。
(例えば、新聞紙人間なのは変わらないが、気づいたら別の新聞紙人間になっていたとか)
また、この視点での映像は『移動』を得意とします。
というのも、実際に人に取り付けて撮影するので、取り付けられた人物が動けば、動いた映像を撮影することが可能ですし、
視聴者に対しては、その人物に入り込んでいるという前提を共有すれば、映り込んでしまう手や足なども意味付けされるのです。
これはストーリー展開において、非常に大事なことでもあります。
話が進む時に、同じ場所で行われるというのは滅多にありません。
(例えば、舞台上で行われる演劇が、同じ場所で別の場所の意味をなすことがありますが、それは照明などによって演出されています。
現実空間では、そういった演出を施して意味を変えるのは難しいです。)
この動画ではカメラを取り付けた役者が前進していくにつれて、周りで色々な出来事が起きていくわけですが、
その演出方法にも工夫がいくつも見られます。
具体的なところで見ていきましょう。
予感の創出
まず、警官に追いかけられる人物たちです。
彼らは、登場する際に、警官に「待てー」といったセリフを受けて、主人公の前方を駆け抜けていくわけです。
一回目に、「待てー」を聞いたら後ろを振り返ったりして、どこで何が起きているかを確認するでしょう。
しかし、これが2回3回と起きていくと、「待てー」を聞けばその後自分の横を走り抜けていくのが予想できるわけなんです。
こうすることで、2回目以降わざわざ後ろを向かなくて済むようになります。
これは『Pearl』にも共通することですが、「後ろを見なくていい」というのは非常に助かることです。観客にとっても、制作者にとっても。
前方で次々と起こる出来事
主人公が前進するにつれて、前方で色々な出来事が発生していきます。
これは上記にも書きましたが、ストーリー展開する上で重要なことです。
そして、通り過ぎていくという行為も大事な役割を担ってくれるのです。
予感の創出、の部分にも書きましたが、前方で起きている出来事を通り過ぎてしまえば、
その後、後ろで起こっている出来事をわざわざチェックする必要がなくなるわけです。
これはスムーズなストーリー理解に有用でしょう。
カメラを取り付けた人物を映さないための工夫
これは撮影方法の工夫みたいなところの話。
技術的なところがわからない人は、読み飛ばしてもらって大丈夫です。
この予告犯の動画、360度視点で視聴しているときは、真下を見ると
このようになっています。
しかし、これを正距円筒図法で見てみると、
このようになっているわけです。
これを見て、僕は、
360度で撮った映像に、後から新聞紙の部分を貼り付けているのだ、
という風に解釈しました。
これを見てしまうと、意外とたいしたことないな、と思う反面、
安くごまかすのには結構いい手法だな、とも思いました。このやり方はパクれそうだな、と。笑
それと、このラストシーンについても
鏡に映る動画の一部は後から足したのではないかと。
鏡に映る自分自身の映像だけは、修正したものだと思うのです。
なぜなら、違和感があるから。
正距円筒図法でよく見ていると、ちょっとしたズレがあるように見えるのです。
これは、確認は持てませんが、撮影方法とかも加味すると、おそらく修正したんだと思います。
でも、こういった工夫っていいですよね!
総括
ここまで、①, ①', ②, ③とシリーズでVR映画について書いてきましたが、
自分の感想をまとめるとすれば、
「面白いものも中にはある。そして、その作品で得られる体験は、今までの映像作品にはない新しいものである」
ということです。
もちろん、360度映像というのは既にyoutubeに山のようにあるし、その大半がまだまだ発展途上なことは否めません。
つまらないものがいっぱいあるのも事実だと思います。
しかし、このジャンルは一つの確固としたジャンルとして、これから育っていくのだと僕は思っています。
そして、それはお金も人材も豊富にあり、大量に投資されているアメリカを軸に展開していくのでしょう。
今後も動向には注目しつつ、面白い作品に出会えたら嬉しいものだ。